Bialystocks、5月7日(土)開催ツーマンライブ『音楽交流紀2』オフィシャルレポート!

2022年5月7日(土)、渋谷WWWにてBialystocksが初めて主催するツーマン・イベント『音楽交遊紀』の第一回が開催された。

映像的でスタイリッシュな演奏とエモーションとクールネスのコントラストが特別な余韻を残す歌で話題を呼びつつあるBialystocksが、初めてのイベントの相手に声をかけたのは、昨年末にリリースしたデビュー・アルバムが好評の四人組ロックバンド、グソクムズ。お互いにそれ以前の面識や交流はないという。

最初に演奏をしたグソクムズのボーカル、ギター、たなかえいぞをが、客数制限中とはいえソールドアウトとなった渋谷WWWの客席をしげしげと眺め、「ここ(WWW)には初めて来ました」とMCしたのを聞いて、一瞬耳を疑った。

photo by SHUHEI.W

グソクムズにとって、この日がWWWでの初ライブには違いないが、オープンから10年を超えたこのライブハウスでは国内外のバンドやアーティストがいつも興味深い公演をしている。グソクムズがライブをあまりしてこなかったバンドだとはいえ、音楽ファンならお客として来たことくらいはあるだろう、と思うのだが、彼らが拠点としている吉祥寺など武蔵野エリアと渋谷とは行動半径が違うということなのかも。「東京で生まれ育つと、意外と自分の街と隣の駅くらいまでしか知らなくなるんだよ」と、以前に音楽業界の大先輩に言われたことを思い出した。自分の街で事足りるのだから、何かに憧れて混み合う街まで出かける必要はない。それもわかる。

この夜、その言葉を聞いて、また別のことも考えた。グソクムズは“ネオ風街”というキャッチフレーズや、はっぴいえんどを引き合いに出して語られることも多いバンドだが、たなかのMCは「ここがどこだか知らないし、渋谷だからこう思う、みたいな感覚は自分たちには関係がない」と言っているようにも思えた。渋谷とか吉祥寺とか東京とか、街と音楽にまつわる情報を余計な記名性から自由にして、景色と言葉をもっともっと抽象化させながら誰かの耳にすっと入り込んで、それぞれの記憶のぬくもりや孤独と重なり合う。この夜行われているイベント『音楽交遊紀』を主宰しているBialystocksのやろうとしていることにも、そんな感覚が共通している気がしないか。

この夜のイベント『音楽交遊紀』は、Bialystocksが基本的に面識がないけれど気になっているアーティストを迎えてのツーマン・シリーズだと聞いた。もちろん音楽を聴いて、バックグラウンドにもリサーチをしてのオファーではあるだろう。ライブより曲作りを優先し、正式デビュー前から多くの楽曲をネットで発表してきたグソクムズも、甫木元 空(ほきもと そら)が監督を務めた映画『はるねこ』のサウンドトラックを生演奏するという必要が生じて結成されたBialystocksも、ともにライブハウスではない場所に出自を持つバンドというのも共通点だと言える。

『音楽交遊紀』の設定には、そんな見知らぬ者たちが、すれ違う刹那に似たような気配を感じて目が合う、みたいな関係性を見出そうとする姿勢がうかがえた。緊張感のある対決というのとも違うし、アンコールでセッションでもしましょうといきなり仲良しぶるのとも違う。今日この空間、この街に居合わせる偶然をとらえ、そこから生まれる何かをとらえる、という発想。だから、イベントとしては実はかなりそっけない。でも、そのそっけなさが、ある意味で新鮮だ。

先述したように、Bialystocksのボーカル、ギターで、楽曲の作詞と作曲の多くを担う甫木元 空(ほきもと そら)は、映像作家としても独自のキャリアを歩んでいる。また、甫木元は先ごろ亡くなった映画監督、青山真治の門下生でもある。氏に見出され、作品製作のため高知に移住するなど映像作家としても独自のキャリアを歩んでいる。青山の影響と言っていいのかはわからないが、ツーマンという設定があり、音楽という確かな脚本があるのだから、その制度を演奏で高めてゆけるのなら余計な演出は要らない、という態度を僕は感じた。

朝田拓馬(ギター)、越智俊介(ベース)、小山田和正(ドラムス)、佐々木詩織(コーラス)、オオノリュータロー(コーラス)のサポートでの7人編成。いずれも確かな演奏力の持ち主だが職人的に自制することなく、与えられたスペースでのびのびとプレイしているのが印象的。CRCK/LCKS、CICADAなどでも活動する越智俊介の、ロック的なドライブ感にもジャズ、R&B的なバウンス感にも対応するベースのフレージングがひときわ印象に残った。

グソクムズの音楽は現代型の「シティ・ポップ」と呼ばれることも多いが、実はもともとフォークデュオから出発した出自が示すように、意外とゴツゴツ、ザラザラとした心象を内面に持っていることがわかる。Bialystocksが2人体制になって初めて発表したEP『Tide Pool』(2022年)を聴いたときに感じたフォーク性と、そこも通じ合っているのかもしれない。メンバーが2人になったからフォークっぽくなったという単純な話ではなく、もともとあった彼らの物語性に、彼らの“わたし”がより明確ににじむようになったと感じたのだ。言葉のうえでも、音のなかでも。

ライブの中盤、EPでもひときわ印象的だった「All Too Soon」が歌い出された瞬間、ちょっと鳥肌が立った。すごい演奏とか、斬新な表現ということではなく、無骨で生な感情が洗練されたサウンドという枠組みを超えて飛びかかってきたと思ったからだった。「I Don’t Have a Pen」や「夜よ」といったファースト・アルバム『ビアリストックス』(2021年)収録の楽曲も、サウンドが大きく変化したわけではないのに、心のリアレンジがあるように感じた。もしかしたら師と仰いでいた青山真治を失ったことや、あらためて2人で動き出したバンドでの表現者として背負うべき自覚が影響しているのかもしれない。

アンコールで演奏された「差し色」は、彼らのナンバーとしてはわかりやすい希望や優しさを感じさせる最新曲。淡いメロウさが素晴らしいが、そこにも「このまま」でいることを許すのではなく、新たな色を加えていくことで人生という物語を続けるのだという静かだが強い意志が横たわっていた。

photo by SHUHEI.W

都会のノマドともいうべき2つのバンドの交錯。彼らの歩む道がこれから並行してゆくのか、それぞれの道に分かれてゆくのかはわからない。だが、「風街」や「渋谷系」から遠く離れた時代に、街や流行といった記号に根差さず、自分たちの行きたいほう、光をかんじるほうへとゆうゆうと歩んでいるその姿が、彼ら自身が考えている以上に世代を超えて多くの人たちを惹きつけているのはよくわかる。大げさに言えば、すべてがわかりきったような顔をして生きる者たちがはびこる世の中で、無益で過剰なものと言われようが何かを作り出さずにはいられない人間たちにとって、「希望」の道しるべみたいに感じられるからだろう。

『音楽交遊紀』第二回は、優河with魔法バンドを迎えて7月9日(土)に同じ渋谷WWWで行われる。

text by 松永良平(リズム&ペンシル)

■Bialystocks「差し色」ミュージックビデオ:

■配信情報:
Bialystocks『差し色』(読み:サシイロ)
4月15日(金)配信中
配信リンク:
https://lnk.to/sashiiro

■ライブ情報:
Bialystocks Live 2022 “音楽交流紀 2”
2022年7月9日(土) @ SHIBUYA WWW
GUEST: 優河with魔法バンド
OPEN/START 17:15/18:00
TICKET ¥4,000(税込・自由) + 1DRINK
チケットURL:
https://w.pia.jp/t/bialystocks-2022-2/
受付期間:6/6(月)23:59まで

■ Bialystocksプロフィール:
2019 年、 ボーカル甫木元空監督作品、 青山真治プロデュースの映画 「はるねこ」 生演奏上映をきっかけに結成。 ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。2021 年 1st Album 『ビアリストックス』 発表。同年METROCKに出演が決定。収録曲「I Don’t Have a Pen」はNTTドコモが展開する「Quadratic Playground」のWEB CMソングに選出されている。
▽About Bialystocks
https://lit.link/bialystocks